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正しい耳のケアとは?外耳炎を防ぐ耳掃除の頻度とコツを耳鼻科医が解説

「耳がムズムズして、つい毎日耳かきをしてしまう」「気持ちいいのでやめられない」——そんな方は少なくありません。ところが、良かれと思って続けている耳掃除が、実は外耳炎(がいじえん)などのトラブルを招いていることがあります。この記事では、当院の動画をもとに、耳垢(みみあか)の本当の役割から、外耳炎を防ぐ「正しい耳のケア」の頻度とコツまで、耳鼻咽喉科の視点でわかりやすく整理しました。

そもそも「耳垢(耳あか)」とは?

耳垢は「汚れ」というイメージがありますが、正体は外耳道(耳の穴から鼓膜までの通り道)の皮膚から自然に出る古い角質や皮脂、耳の中の分泌物、ほこりなどが混ざったものです。実はただのゴミではなく、外耳道の皮膚を保護し、乾燥やほこり・細菌の侵入をやわらげるバリアのような役割を持っています。耳垢はやや酸性で、細菌やカビが増えにくい環境をつくる働きがあるともいわれます。耳垢が適度にあること自体は、むしろ耳が正常に働いているサインでもあります。取りすぎてしまうと、こうした本来の保護作用まで失われ、かえって外耳道が乾燥したり荒れやすくなったりすることもあります。

そして意外に知られていないのが、耳には自浄作用(じじょうさよう)があるということです。外耳道の皮膚は少しずつ入口に向かって移動しており、耳垢は放っておいても自然に外へ運ばれていく仕組みになっています。つまり多くの人にとって、奥まで念入りに掃除する必要は本来ありません。「掃除しないと詰まってしまう」というのは、多くの場合は思い込みなのです。

耳垢は「乾型」と「湿型」がある
耳垢には、カサカサした乾いたタイプ(乾型)と、しっとりした湿ったタイプ(湿型)があり、これは体質(遺伝)で決まります。日本人は乾型が多いといわれますが、どちらが良い・悪いというものではありません。湿型の方は耳垢がたまりやすく感じることもありますが、基本的な考え方(奥をいじりすぎない)は同じです。

やりすぎ耳掃除が招く「外耳炎」のリスク

耳掃除の一番の落とし穴は、やりすぎです。綿棒や耳かきで毎日ゴシゴシすると、外耳道のデリケートな皮膚が少しずつ傷つき、そこから炎症が起こります。これが「外耳炎(外耳道炎)」です。かゆいから掻く、掻くと皮膚が荒れてさらにかゆくなる——というかゆみの悪循環に陥ってしまうことも少なくありません。

また、綿棒でかえって耳垢を奥へ押し込んでしまい、鼓膜の手前で固まってしまうこともあります。良かれと思ったケアが、逆に耳の調子を悪くしてしまうわけです。次のような「やりがちなNG」に心当たりがないか、チェックしてみてください。

こんな耳掃除はやりすぎのサイン
× 毎日のように耳掃除をしている
× 気持ちよくて長時間・強い力でこすってしまう
× 耳の奥深くまで綿棒や耳かきを入れている
× かゆいたびに耳かきや綿棒でかいている
× 掃除のあと、耳が痛い・ヒリヒリすることがある

「外耳炎」ってどんな病気?

外耳炎は、外耳道の皮膚に炎症が起きた状態です。主な症状は、耳の痛み・かゆみ・耳だれ(じくじくした分泌物)、耳がふさがった感じ(耳閉感)などです。触ったり引っぱったりすると痛みが強くなるのも特徴のひとつです。炎症が強くなると腫れて外耳道が狭くなり、聞こえにくさを感じることもあります。

また、湿った状態が続いたり傷ができたりすると、カビ(真菌)が繁殖して起こる「外耳道真菌症」というタイプもあります。これは強いかゆみが長引きやすく、治療にも時間がかかることがあります。いずれのタイプでも、まずは「耳をいじらないこと」が回復の第一歩です。市販薬で自己流に対応するより、炎症の状態を診てもらったほうが、遠回りを防ぎやすくなります。

耳がかゆくなるのはなぜ?

「かゆいからつい耳をいじってしまう」という方は多いですが、そもそもなぜ耳はかゆくなるのでしょうか。外耳道の皮膚は非常に薄くてデリケートなうえ、汗腺や皮脂腺があり、ちょっとした刺激や乾燥、湿り気の変化でかゆみを感じやすい場所です。耳かきのしすぎで皮膚のバリアが弱まると、わずかな刺激でもかゆみを感じ、掻くとさらに荒れて、また掻きたくなる——という悪循環に入ってしまいます。

かゆみの背景には、外耳炎や外耳道真菌症のほか、アトピー性皮膚炎や乾燥、シャンプー・整髪料などの刺激、まれに補聴器やイヤホンの素材による接触性の皮膚トラブルが隠れていることもあります。イヤホンを長時間つけっぱなしにすると、耳の中が蒸れて雑菌が繁殖しやすくなり、かゆみや炎症の一因になることもあります。かゆみが長引くときは「掻いて解決」しようとせず、原因に合わせたケアが必要になるため、耳鼻科で診てもらうのが近道です。

正しい耳のケア——頻度とコツ

では、どのくらいの頻度で、どんなふうにケアすればよいのでしょうか。ポイントは「やりすぎない」こと。基本は次の3つを意識すれば十分です。

POINT 1
頻度は控えめに
毎日は不要。気になる方でも2週間〜1ヶ月に1回ほどを目安に。
POINT 2
入口だけ・浅く
奥まで入れず、耳の入口から1cm程度、見える範囲を軽くぬぐう程度で十分。
POINT 3
やさしく・力を入れない
ゴシゴシこすらない。痛みやかゆみが出たら中止する。

綿棒・耳かきの落とし穴

身近な綿棒も、使い方によっては要注意です。太めの綿棒を奥まで入れると、耳垢をぬぐうどころか奥へ押し込んでしまうことがあります。押し込まれた耳垢は自浄作用でも出にくくなり、固まって「耳垢塞栓(じこうそくせん)」の原因になることも。金属や硬い耳かきは、力が入りすぎると外耳道や鼓膜を傷つけるおそれがあります。

「耳の中がかゆい」ときは、耳かきで掻くのではなく、まずは触らずに様子をみることが大切です。かゆみが続く場合は、外耳炎や乾燥、皮膚のトラブルが隠れていることもあるため、掻き続けずに耳鼻科で相談するほうが安心です。オイルなどを自己判断で耳の中に入れるのも、状態によっては逆効果になることがあるので、迷ったら専門家に相談しましょう。

耳掃除だけで耳鼻科を受診してもいい?

「耳掃除くらいで病院に行っていいの?」とためらう方も多いのですが、答えはもちろん受診してかまいません。耳鼻咽喉科では、専用の器具やカメラ(顕微鏡・内視鏡)を使って、外耳道や鼓膜を傷つけないよう安全に耳垢を取り除くことができます。自分では見えない奥の状態も確認できるので、「うまく取れない」「詰まっている気がする」というときこそ、無理に自分でいじらず任せてしまうのがおすすめです。

こんな方は耳鼻科での耳掃除が安心
・耳垢がたまりやすい、湿型で気になる方
・お子さんや高齢の方、補聴器を使っている方
・自分で取ろうとすると痛い・うまく取れない方
・耳がふさがった感じや聞こえにくさがある方

耳垢が溜まりすぎると——「耳垢塞栓」

耳垢が外耳道いっぱいに固まって詰まった状態を「耳垢塞栓」といいます。とくに耳垢が湿型の方、外耳道が狭い方、補聴器や耳栓を長時間使う方、高齢の方などで起こりやすくなります。詰まると次のような症状が出ることがあります。

聞こえにくい
音がこもる・耳が遠くなった感じ
耳がふさがる感じ
耳閉感・自分の声が響く
耳鳴り・違和感
ときにめまいを感じることも

耳垢塞栓は、耳鼻科で取り除けばすっきり改善することがほとんどです。急に聞こえにくくなった、耳がふさがった感じが続くというときは、自分で無理に取ろうとせず受診してください。

こんなときは耳鼻科へ(受診の目安)

早めの受診を考えたいサイン
・耳の痛み・耳だれが続く、においがある
・かゆみが長く続く、掻いても掻いてもかゆい
急に聞こえにくくなった・耳がふさがった感じが取れない
・耳掃除のあとに出血した、強い痛みが出た
・お子さんが耳を頻繁に触る・気にしている

とくに、耳掃除のあとの強い痛みや出血、急な聞こえにくさがあるときは、外耳道や鼓膜を傷つけている可能性があります。自己判断で対応せず、早めに耳鼻科を受診しましょう。

よくある質問(Q&A)

Q耳掃除は毎日したほうがいいですか?
A毎日行う必要はありません。耳には自浄作用があり、耳垢は自然に外へ運ばれます。むしろ毎日のケアは皮膚を傷めて外耳炎の原因になることがあるため、頻度は控えめが基本です。
Q綿棒と耳かき、どちらがいいですか?
Aどちらも入口を軽くぬぐう程度なら問題ありませんが、奥まで入れると綿棒は耳垢を押し込みやすく、硬い耳かきは皮膚を傷つけやすい面があります。共通して大切なのは「浅く・やさしく・短時間で」。心配なときは耳鼻科に任せるのが確実です。
Q子どもの耳掃除はどうすればいい?
Aお子さんの外耳道は狭くデリケートで、動いて危険なこともあります。家庭では入口をやさしくぬぐう程度にとどめ、奥が気になるときや耳を頻繁に触るときは、無理をせず耳鼻科で診てもらうと安心です。

まとめ

耳垢は汚れではなく、耳を守る役割を持ち、放っておいても自然に外へ出ていくもの。だからこそ、耳のケアで一番大切なのは「やりすぎないこと」です。毎日ゴシゴシ掃除するのではなく、頻度は控えめに、入口だけを浅く・やさしく。かゆみや痛み、聞こえにくさが続くときや、うまく取れないときは、自分で無理をせず耳鼻科に相談してください。「気持ちいいから」と習慣になっている耳掃除こそ、一度見直してみる価値があります。正しい知識で、耳のトラブルを上手に予防していきましょう。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断や治療を保証するものではありません。症状の程度や適切なケア・治療は個人によって異なります。気になる症状がある場合は、自己判断せず医療機関を受診してください。