副鼻腔炎が3ヶ月以上治らない——長引く蓄膿症の「4つの原因」と検査・治療を耳鼻科医が解説
「風邪はとっくに治ったのに、鼻づまりや黄色い鼻水、頬の重い感じがもう何ヶ月も続いている」——そんな状態が3ヶ月以上続いているなら、それはよくある一時的な副鼻腔炎(蓄膿症)とは少し事情が違うかもしれません。副鼻腔炎が長引く背景には、実はいくつかのタイプがあり、原因によって必要な検査も治療もまったく変わってきます。この記事では、当院の動画をもとに、長引く副鼻腔炎に隠れた「4つの原因」と、受けておきたい検査・治療の考え方を、耳鼻咽喉科の視点でわかりやすく整理しました。
そもそも「副鼻腔炎(蓄膿症)」とは?
副鼻腔(ふくびくう)とは、鼻の穴の奥やその周囲、頬の骨・眉間・目の間などにある空洞のことです。左右で合わせて大小いくつもの部屋があり、それぞれが細い通り道で鼻の中とつながっています。ここに炎症が起きて膿(うみ)や粘液がたまった状態が副鼻腔炎で、昔から「蓄膿症(ちくのうしょう)」とも呼ばれてきました。
多くの副鼻腔炎は、風邪をひいた後に細菌感染が加わって起こる「急性副鼻腔炎」です。これは適切な治療や自然経過で数週間ほどで落ち着くことがほとんどです。一方、炎症が3ヶ月以上続くものは「慢性副鼻腔炎」と呼ばれ、単なる長引きだけでなく、後で述べるような別の原因が隠れていることがあります。だからこそ、長引くときは「なぜ治りにくいのか」を見極めることが大切になります。
長引く副鼻腔炎に隠れた「4つの原因」
副鼻腔炎が3ヶ月以上治らないとき、その背景として代表的なのが次の4つのタイプです。それぞれ特徴が異なり、片側だけなのか両側なのか、においの障害があるか、歯の治療歴があるか——といった手がかりで見分けていきます。まずは全体像をつかんでおきましょう。
原因①:細菌性副鼻腔炎の慢性化(慢性副鼻腔炎・蓄膿症)
もっとも多いのが、急性の細菌性副鼻腔炎がすっきり治りきらないまま慢性化してしまうパターンです。副鼻腔と鼻の通り道がむくみでふさがると、膿が排出されにくくなり、炎症がだらだらと続いてしまいます。黄色や緑色っぽい粘り気のある鼻水、後ろに流れる鼻水(後鼻漏)、頬や額の重さ、においの鈍さ、たんがからむ咳などが典型的な症状です。
治療では、鼻の通りをよくして膿を出しやすくすること、そして炎症を鎮めることが柱になります。少量のマクロライド系抗菌薬を数ヶ月にわたって続ける方法(少量長期投与)や、鼻の洗浄、ネブライザー(吸入)などが用いられることがあります。効果や適応は状態によって異なり、どの治療をどれくらい行うかは診察のうえで医師が判断します。多くはこうした保存的な治療で改善に向かいますが、それでも良くならない場合には、次に挙げるような別の原因を疑って検査を進めます。
原因②:カビ(真菌)による副鼻腔炎
副鼻腔炎というと細菌をイメージしがちですが、カビ(真菌)が原因になることもあります。空気中にただよう真菌(アスペルギルスなど)が副鼻腔の中で塊をつくり、慢性の炎症を起こすもので、「副鼻腔真菌症」と呼ばれます。健康な人にも起こりえますが、免疫力が下がっている方や高齢の方でみられることがあります。
特徴は片側だけに起こりやすいこと、そして抗菌薬を使ってもなかなか改善しないことです。ときに黒っぽい塊のような鼻の分泌物や、頬・目のあたりの痛みが出ることもあります。診断にはCT検査が役立ち、副鼻腔の中に石灰化した影がみられることが手がかりになります。カビの塊が固まっているタイプでは、薬だけで溶かすことは難しく、手術で取り除く治療が検討されます。片側の頑固な副鼻腔炎は、こうした真菌症の可能性も念頭に置いて調べることが大切です。
原因③:歯が原因の副鼻腔炎(歯性上顎洞炎)
意外に見落とされやすいのが、歯が原因で起こる副鼻腔炎です。上の奥歯(臼歯)の根っこは、頬の奥にある「上顎洞(じょうがくどう)」という副鼻腔のすぐ下にあります。そのため、虫歯や歯の根の炎症、歯周病、抜歯や歯の治療のあとなどをきっかけに、炎症が上顎洞へ広がってしまうことがあるのです。これを「歯性上顎洞炎」といいます。
この場合も片側だけに症状が出やすく、鼻や口の中に感じる強い悪臭が手がかりになることがあります。耳鼻科の治療だけでは改善しにくく、原因となっている歯の治療が必要になるため、歯科と耳鼻科が連携して進めることが大切です。「奥歯の治療をした前後から片側の鼻の調子が悪い」「片方だけ嫌なにおいがする」——そんなときは、歯が関係していないかという視点を持って受診すると、遠回りを防ぎやすくなります。
原因④:好酸球性副鼻腔炎(指定難病)
近年増えているとされるのが「好酸球性副鼻腔炎」です。アレルギーに関わる白血球の一種「好酸球」が副鼻腔で強い炎症を起こすタイプで、両側にたくさんの鼻茸(はなたけ=ポリープ)ができ、においが分かりにくくなるのが大きな特徴です。ぜんそくを合併している方や、通常の副鼻腔炎の治療・手術をしても再発をくり返す方でみられることがあります。重症のものは国の指定難病となっています。
従来の抗菌薬(マクロライド少量長期)が効きにくいことも知られており、治療では鼻の中に噴霧・点鼻するステロイド薬や、状態に応じた内服、手術などが組み合わせて検討されます。それでもコントロールが難しい重症例に対しては、後述する新しい注射のお薬が選択肢になることもあります。両側の鼻づまりとにおいの低下が長く続く場合は、このタイプを念頭に、専門的な検査を受けることがすすめられます。
長引く副鼻腔炎で行う検査
3ヶ月以上治らない副鼻腔炎では、「どのタイプなのか」を見極めるための検査が重要になります。原因が分かってはじめて、その人に合った治療を選ぶことができます。代表的な検査を整理しました。
治療の選択肢
治療は原因タイプによって変わりますが、大きくは「薬による保存的治療」と「手術」に分けられます。まずは鼻の通りをよくし、炎症を抑える保存的治療が基本です。鼻の洗浄(鼻うがい)、点鼻ステロイド、状態に応じた内服薬などが用いられます。細菌性の慢性副鼻腔炎ではマクロライド系抗菌薬の少量長期投与が選ばれることもあります。
薬で十分に良くならない場合や、鼻茸が大きい場合、真菌の塊がある場合などには、内視鏡を使った手術(内視鏡下鼻副鼻腔手術)で詰まった部屋を開いて換気と排出をよくする治療が検討されます。歯性上顎洞炎では歯の治療が欠かせません。どの治療が適しているかは原因と重症度によって大きく異なるため、自己判断せず、検査結果をもとに医師と相談して決めていくことが大切です。効果の出方には個人差があります。
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自分でできるセルフケア
副鼻腔炎そのものを自分だけで治すことは難しいですが、症状をやわらげ、悪化を防ぐために日常でできる工夫があります。次のポイントを意識してみてください。
こんなときは耳鼻科へ(受診の目安)
とくに、目の周りの腫れや強い頭痛、ものが二重に見える・視力の異常などがある場合は、副鼻腔の炎症が周囲に広がっているおそれがあり、早めの受診が必要です。放置して良いものと、そうでないものを見分けるためにも、長引くときは一度耳鼻科で調べてもらうと安心です。
よくある質問(Q&A)
まとめ
副鼻腔炎が3ヶ月以上治らないときは、「ただ長引いているだけ」ではなく、細菌性の慢性化、カビ(真菌)、歯が原因、好酸球性——といった別のタイプが隠れていることがあります。片側だけなのか両側なのか、においの障害があるか、歯の治療歴があるか、といった手がかりから原因を絞り込み、内視鏡やCTなどの検査でタイプを見極めることが、遠回りせずに改善へ向かう近道です。長引く鼻の不調を「体質だから」とあきらめず、一度耳鼻科で相談してみてください。