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長引く不調は「鼻の奥の炎症」かも? 上咽頭炎とその治療(Bスポット療法)を耳鼻科医が解説

「なんとなく体がだるい」「頭が重い、肩がこる」「鼻水がのどに垂れて、たんが絡む」——検査をしても大きな異常が見つからず、お薬を飲んでもなかなかすっきりしない。そんな長引く不調にお悩みではありませんか。

じつは、その背景に「鼻の奥(上咽頭)の炎症」=上咽頭炎(じょういんとうえん)が関係していることがあります。まだ一般にはあまり知られていませんが、近年少しずつ注目されている状態です。

この記事では、当院の院長・Drはなまるが、上咽頭炎とはどんな病気か、なぜ全身の不調につながるのか、そして治療法(Bスポット療法・EAT)やセルフケアまで、耳鼻科医の視点でくわしく解説します。

そもそも「上咽頭」ってどこ?どんな役割?

上咽頭(じょういんとう)は、鼻の奥、のどの上のつき当たりにある部分です。口を開けて鏡でのぞいても見えず、鼻から細いカメラ(ファイバースコープ)を入れて、ようやく観察できる場所です。

ここには、吸い込んだ空気が最初に当たります。空気中のほこり・ウイルス・細菌などをキャッチする免疫の組織(咽頭扁桃など)があり、いわば体を守る「関所(フィルター)」のような役割をしています。外からの刺激を受け止める場所なので、炎症が起きやすい場所でもあります。

上咽頭炎とは?

上咽頭炎は、その名のとおり上咽頭に炎症が起きた状態です。かぜのときなどに起こる急性のものと、はっきりした自覚がないまま炎症が続く慢性のものがあります。

炎症があると、分泌物やたんが上咽頭からにじみ出て、のどのほうへ流れ落ちます。これが後鼻漏(こうびろう)——「鼻水がのどに垂れる」「たんが絡む」「鼻の奥に何かへばりつく」といった違和感の原因になります。

とくに慢性の上咽頭炎では、実際の鼻水の量以上に「のどに何か流れる・へばりつく」という感覚(後鼻漏感)が強く出ることもあり、これがつらさや気になりやすさにつながります。

上咽頭炎で起こりやすい症状

上咽頭炎の症状は、鼻やのどまわりの症状だけにとどまらないことがあります。

後鼻漏・鼻の奥の違和感
鼻水やたんがのどに垂れ、引っかかる感じ
頭痛・目の奥の痛み
頭が重い、目の奥が痛む
肩こり・首こり
首まわりがガチガチにこる
だるさ・疲れ
体が重い、疲れが抜けない
めまい・集中力の低下
ふらつく、集中しづらい

鼻やのど以外の症状が出る理由は、まだはっきり解明されていません。ただ、上咽頭は自律神経(とくに迷走神経)と関わりの深い場所とされ、ここに炎症があると自律神経が刺激・影響を受けて、全身のさまざまな不調につながる可能性がある、と考えられています(研究が進められている段階です)。

全身の不調との関わりも指摘されています

慢性的な上咽頭の炎症は、のどや鼻の症状だけでなく、体のさまざまな不調と関わっている可能性が指摘されています。これは、上咽頭が自律神経(迷走神経)と近い関係にあることや、炎症を起こした部位から離れた臓器へ影響が及ぶ「病巣(びょうそう)炎症」という考え方によるものです。

報告のなかには、慢性上咽頭炎と、頭痛・肩こり・慢性的な疲労感、めまいなどとの関連を指摘するものもあります。ただし、これらはまだ研究が進められている段階で、すべてが科学的に確立しているわけではありません。過度に不安になったり期待しすぎたりせず、「鼻の奥のケアで体調が整いやすくなることがある」くらいの受け止め方がよいでしょう。

大切なのは、原因がはっきりしない不調が続くときに、「鼻の奥」という見落とされやすい場所にも目を向けてみることです。

上咽頭炎が起こる・長引く原因

上咽頭炎は、かぜやウイルス感染をきっかけに起こることが多いですが、次のような要因があると、炎症が起こりやすく、また長引きやすいと考えられています。

とくに関係が深いのが口呼吸です。本来、鼻は吸った空気を加湿・加温し、ほこりやウイルスを取り除く「フィルター」の役割をしています。口呼吸だと、冷たく乾いた汚れた空気が直接上咽頭に当たり、刺激となって炎症を招きやすくなります。アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などで鼻が詰まっていると口呼吸になりやすいため、鼻の状態を整えておくことも大切です。

そのほか、後鼻漏、喫煙、空気の乾燥、首まわりの冷え、疲れやストレスなども、上咽頭の炎症を起こしたり悪化させたりする要因になります。心当たりがある場合は、後述のセルフケアもあわせて意識してみましょう。

急性上咽頭炎と慢性上咽頭炎

上咽頭炎には、かぜなどで一時的に強い炎症が起こる急性上咽頭炎と、はっきりした自覚がないまま炎症がだらだらと続く慢性上咽頭炎があります。

急性のものは、のどの痛みや発熱をともなうこともありますが、多くはかぜの回復とともに落ち着きます。一方で慢性のものは、後鼻漏や鼻の奥の違和感、だるさ・頭痛といった症状が長く続きやすく、「検査では大きな異常がないのに、なんとなく不調が続く」という形であらわれることがあります。長引く不調にお困りの場合は、この慢性上咽頭炎が隠れていないか、一度確認してみる価値があります。

なぜ見逃されやすいの?

上咽頭は、のどを「あー」と開けても見えず、カメラで鼻の奥をのぞかないと確認できない場所です。そのため、一般的な検査では異常が見つかりにくく、「原因不明」とされてしまうことがあります。

耳鼻科では、ファイバースコープで上咽頭を観察します。はっきりした炎症が見えることもあれば、見た目には目立たないこともあります。その場合は、綿棒で上咽頭をこすってみて、出血や痛みの反応があるかどうかで炎症の有無を確認することもあります。

上咽頭炎の治療:Bスポット療法(EAT)

上咽頭炎の治療としてよく行われるのが、Bスポット療法(EAT・上咽頭擦過療法)です。

Bスポット療法(EAT)とは
塩化亜鉛(えんかあえん)を含ませた綿棒で、鼻や口から上咽頭をこすり、炎症を抑える処置です
1回の処置は1分ほど。上咽頭に炎症があるかの確認(診断)も兼ねます
目安は週1〜2回、合計10〜15回ほど継続します
健康保険が使えます
処置のときはしみるような痛みがあり、出血することもあります
効果や必要な回数には個人差があり、科学的根拠(エビデンス)はまだ限られています

痛みがともなう処置ですが、上咽頭の炎症を直接抑えることをねらいとしています。近年、症状や炎症所見の改善が報告されていますが、研究の規模はまだ小さく、確立した治療とまではいえない段階です。受けるかどうかは、症状や状態をみながら医師とご相談ください。

自分でできるセルフケア・予防

医療機関での治療とあわせて、日常生活では次のようなセルフケアが上咽頭を守るのに役立つと考えられています。

自分でできるセルフケア・予防
鼻うがい(生理食塩水)で、鼻や上咽頭の汚れ・ウイルスを洗い流す。1日2〜3回まで(やりすぎは粘膜を傷つけるので注意)
口呼吸をやめて鼻呼吸を意識する。鼻づまりで難しいときは耳鼻科で鼻の治療を。就寝中に口が開く方は口テープや加湿も
首(とくに後ろ)を冷やさない。ストールなどで温めると、上咽頭まわりの血行や肩こりの改善にも役立ちます
ほこり・煙などの刺激を避ける。必要な時はマスクを。喫煙・受動喫煙は炎症を悪化させるので控える

これらはあくまで一般的なセルフケアです。症状が続く・強い場合は、自己判断で続けず、一度耳鼻科でご相談ください。

新型コロナの後遺症との関連について

近年、新型コロナウイルス感染症のあとに続く不調(いわゆるコロナ後遺症)と、上咽頭の炎症との関連が指摘され、研究が進められています。上咽頭炎の治療を取り入れる医療機関も出てきていますが、効果には個人差があり、確立した治療法として位置づけられているわけではありません。過度な期待は禁物ですが、長引く不調が続く場合の選択肢のひとつとして知っておくとよいでしょう。

こんな方は一度ご相談を

次のような場合は、一度耳鼻科で上咽頭の状態を診てもらうとよいでしょう。

こんな方は一度ご相談を
検査を受けても原因がはっきりしない不調が続いている
お薬を飲んでも、なかなか改善しない
鼻水がのどに垂れる・たんが絡む・鼻の奥の違和感が続く
だるさ・頭痛・肩こりなどが長引いている

よくあるご質問

QBスポット療法は痛いですか?出血しますか?
Aしみるような痛みがあり、出血することもあります。痛みの程度には個人差があり、処置後しばらく痛みが残る方もいます。
Q何回くらい必要ですか?保険は使えますか?
A目安は週1〜2回、合計10〜15回ほどです。症状によって前後します。健康保険が使えます。
Q市販薬で治りますか?
A市販薬だけで炎症を十分に抑えるのは難しいことが多いです。長引く場合は、一度鼻の奥の状態を確認してもらうことをおすすめします。
Q自分で綿棒でこすってもいいですか?
A自己流の処置は粘膜を傷つけたり、かえって悪化させたりする恐れがあります。医療機関で受けるようにしてください。

医師からのまとめ

長引く不調の背景に、「鼻の奥の炎症(上咽頭炎)」が隠れていることがあります。上咽頭はカメラでないと確認しにくい場所のため、一般の検査では見逃されやすいのが特徴です。

気になる症状が続くときは、一度耳鼻科で上咽頭の状態を確認してもらうと、原因の手がかりが見つかることがあります。Bスポット療法やセルフケアなど、状態に応じた対応を一緒に考えていきますので、お気軽にご相談ください。

※本記事は当院の動画をもとに、一般的な情報をまとめたものです。上咽頭炎やBスポット療法(EAT)については研究が進められている段階であり、効果や適応には個人差があります。診断・治療は医師の診察のうえで行われます。気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。