耳管開放症
耳管開放症とは?
耳管開放症は、鼻と耳をつなぐ耳管が閉じきらず、開いている時間が長くなる(もしくは開きっぱなしになる)病気です。この状態では、自分自身の声や呼吸に伴う圧力の変化が弱くならないまま直に耳側に伝わるので「自分の声が大きく響く(自声強聴)」「耳がつまった感覚(耳閉感)」といった症状が出ます。一般的に難治性の病気と言われています。
目次
- 症状
- 原因
- 検査
- 治療
- 注意点
耳管開放症の症状
- 耳がつまった感覚(耳閉感)
- 自分の声が響く(自声強聴)
- 自分の呼吸音が聞こえる(呼吸音聴取)
- 姿勢によって症状が改善
症状としては耳がつまった感覚(耳閉感)がします。また耳管開放症に特徴的な症状として自分の声がよく響いたり(自声強聴)、自分の呼吸の音がよく響きます(呼吸音聴取)。耳管が開いているため、直接自分の声や呼吸の音が耳に伝わりやすいために起こります。
そして最も特徴的な症状は姿勢や体位で症状が改善する点でお辞儀したり、横に寝た姿勢をとると症状が良くなります。これはお辞儀したり、横に寝ると頭に血液などが溜まって耳管が圧迫され、一時的に症状が改善するためです。実際診察室でお辞儀をしてもらって診断することもあります。
耳管開放症の原因
- 体重減少(やせ)
- ピル
- 脱水など
耳管は通常周りの脂肪や水分(血液)などに圧迫されて閉じている状態ですが、耳管開放症の場合には耳管の周りの脂肪や水分が減ることによって圧迫されなくなり耳管が開きっぱなしの状態になってしまいます。例えば急激なダイエットで体重が減って耳管周りの脂肪が減ることで起こりやすいとされています。また妊娠やピルの内服が原因で起こることもあり、実際、30-40歳の女性に多いとされている病気です。
耳管開放症の検査
- 耳鏡検査
耳管開放症では鼓膜が呼吸に合わせて動く所見が確認できることがあるのでそれを観察します。
- 聴力検査
耳閉感を生じさせる原因として難聴が隠れていないかを確認することがあります。
- 耳管機能検査
耳管の機能を調べる検査です。この検査により、耳管が正常に開閉しているか、開放(耳管開放症)しているかを判断できます。
耳管開放症の治療法
耳管開放症は基本的には中々治療しにくく症状が長引く事が多いです。その為軽症であればまずは以下の方法で経過観察をします。
- 生活習慣(ダイエット)やストレスなどを改善する
急激な体重減少に陥ってしまった食習慣(ダイエット)やストレスを見直してこれ以上の減量を抑えます。ただ再度体重が元に戻っても耳管周りの脂肪はつきづらいため症状が改善するとは限らないと言われています。
- 水分を多く摂取する
体の水分が減ると耳管周りの水分も減り耳管も開放しやすくなります。水分をこまめに補給し脱水傾向にならないよう注意しましょう。
- 運動する
運動することによって体の筋肉が収縮し全身の血液の巡りも良くなります。そして耳管周りにも血液がよく巡り耳管が解放されにくくなります。特に立ち仕事やデスクワークの人は体の血液や水分が足の方に溜まりやすくなり耳管周りの水分は減って耳管が開放されやすくなるため運動ほどではなくとも定期的に足踏みをして血液の巡りを良くしましょう。
- 首にスカーフやネクタイを強く巻く
スカーフやネクタイを巻くことで首を圧迫させて頭に血液を集め、耳管を解放させにくくする方法です。ただあまり強く絞めすぎると危険ですので締める力は調整してください。
- 薬物治療
漢方薬(加味帰脾湯)やATP製剤などを使用することがあります。効果が乏しい場合は漫然とした使用は控えます。
- 生理食塩水の点鼻
生理食塩水を鼻に入れ、耳管の入り口を浸らせて耳管を塞ぐ方法です。具体的な方法としては
- 頭を後ろに傾ける
- 耳が詰まる方へ頭を45度傾ける
- 耳が詰まる方の鼻に生理食塩水の点鼻を滴下する
生理食塩水の点鼻薬は市販のドライノーズスプレーなどを購入し使用すると良いでしょう。
- 手術
上記治療でも改善しない重症者の方には耳管にシリコン製のピンを鼓膜ごしに挿入する耳管ピン挿入手術や鼓膜にチューブを留置する鼓膜チューブ留置術などの手術が行われれることもあります。ただ前者の耳管ピン挿入術は手術できる施設がかなり限られる特殊な治療のため最後の手段となります。
耳管開放症の注意点
- 鼻すすりはしない
耳閉感などの不快な症状を抑えるために、「鼻すすり」を癖のように繰り返す方がいます。しかし鼻すすりを続けると一時的に症状は改善しても、長期的には滲出性中耳炎、癒着性中耳炎(鼓膜がへこんで中耳の壁と癒着を起こす)、真珠腫性中耳炎などの様々な中耳炎につながる危険性が高まるので決して鼻すすりはしないようにしましょう。