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加齢性難聴

加齢性難聴とは?

加齢性難聴(老人性難聴、老年性難聴)は、加齢によって聴力が低下し、耳が聞こえにくくなる状態を指します。主に最初は高い音域から聞こえにくくなり次第に両耳の難聴が徐々に全体的に進行していきます。難聴は徐々に進行するため本人は難聴の自覚が乏しいことが多く「最近TVの音が大きい」「会話があまりつながらない」とご家族などの指摘で受診されることが多いです。

加齢性難聴は年齢を重ねるにつれほとんどの人がなる症状です。50歳頃から加齢性難聴は始まり、60歳代前半では5-10人に1人、60歳後半では3人に1人、75歳以上は70%以上が加齢性難聴だと言われてます。

また加齢性難聴を放置すると認知症を発症しやすい事が最近判明していますので,生活に支障が出るほどの難聴者は補聴器を装用するなど対策が重要です。

目次

  • 症状
  • 原因
  • 検査
  • 治療
  • 加齢性難聴は認知症発生の最大リスク

加齢性難聴の症状

  • 高音が聞き取りにくい

加齢性難聴では高い音域の音が特に聞こえにくくなります。例えば体温計、風呂が沸いた時の電子音、女性の声などは高い音域なので聞き取りにくくなります。

  • 両側で徐々に進行する

初期は両側の高音域の難聴から始まりますが徐々に低い音の方も聞こえづらくなり全体的に難聴が進行します。逆に片方だけとか、急に聞こえなくなったなどの症状は加齢性難聴を疑いません。突発性難聴などその他の病気の可能性が高いので早期に耳鼻科へ受診しましょう。

  • 言葉の聞き分けがしにくくなる

加齢性難聴では人の話す言葉の聞き分けをする能力も低下してきます。つまり「音は聞こえるが何を話しているのかが分かりにくい」状態です。特徴としては母音「アイウエオ」は比較的聞き取りやすいのですが、子音、特に「カ行」「サ行」の聞き分けはしにくくなります。例えば「サトウさん」を「カトウさん」と聞き間違えたりしやすくなります。

加齢性難聴の原因

加齢による耳の中(蝸牛)に存在する音信号を感知する有毛細胞の減少が原因と考えられています。

加齢性難聴の検査

  • 耳鏡検査

外耳道や鼓膜を観察します。難聴の原因が実は耳垢が詰まっていたり、中耳炎などが隠れていたという事も少なくありません。

  • 標準純音聴力検査(聞こえの検査)

難聴の程度を評価します。加齢性難聴では両側性で高音域の難聴が認められます。

  • 語音聴力検査(言葉の聞き分けの検査)

語音聴力検査は、「あ」や「か」などの言葉をどれだけはっきり聞き取れるかを調べ、言葉の聞き分けの能力を測る検査です。補聴器の導入の際にも行われます。

加齢性難聴の治療

  • 補聴器

加齢性難聴は加齢による耳の聞こえの機能の低下が原因なので難聴を元に戻す方法はありません。そのため聴力低下が著しい人や日常生活が困難な人は「補聴器」を装着して聞こえを補助する必要があります。また加齢性難聴によって生じる耳鳴も補聴器によって改善する可能性があります。補聴器は医師の指導の元導入することをお勧めします。当院でも補聴器相談を受け付けていますのでご相談ください。

その他周囲の対応も重要です。加齢性難聴の方と話す際は「ハッキリ、ゆっくり」話ましょう。

加齢性難聴は認知症発生の最大のリスク

2020年の国際的な論文で難聴が認知症発症の最大のリスク因子であると発表されました。また別の論文では難聴の度合いが高まるほど認知症のリスクも高くなると結論づけています。

軽度難聴者(小さな声が聴こにくい程度 聴力25〜40dB)では認知症になるリスクが健常人の1.9

中等度難聴者(普通の大きさの声が聞こえにくい 聴力40〜70dB)では認知症になるリスクが健常人の3.0

高度難聴者(普通の大きさの声では聞こえない 聴力 70〜90dB)では認知症になるリスクが健常人の4.9倍という結果でした。

またアメリカのジョンズ・ホプキンス大学の研究報告によると、軽度、中等度の難聴をそのまま放置しておくと、聴力が正常な人の認知機能と比べて7歳年上と同等の認知機能になるとされています。つまり「7歳早く認知機能が衰える」と考えられるわけです。

以上の研究結果で難聴だと認知症になりやすいことが分かります。まだ難聴が認知症を引き起こすメカニズムは不明ですが、難聴で脳に入る音刺激自体が少なくなることや難聴による他者とのコミュニケーション量の低下が認知症を引き起こしやすくなると考えれれています。

対策としては「補聴器装用」が重要です。難聴者が 補聴器を使用することで、認知機能の低下を防ぎやすくなったというデータがありますので生活に支障がある難聴者は早期に補聴器使用を推奨します。