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耳鳴り

耳鳴りとは?

耳鳴りとは、実際には音がないのにもかかわらず、耳や頭の中で何かが鳴っている状態です。一時的な耳鳴りは誰にでも起こることがあり、特に心配することはありませんが、中には症状が長引き、日常生活に支障をきたし患者さんにとっては非常にストレスがかかるような場合には治療が必要となります。

実は耳鳴りで悩む人は多く、耳鳴りを感じる人は人口の10-15%にも及ぶとされており医療機関に受診するほどの耳鳴りは総人口の2-3%(約300万人)です。60歳以上なら4人に1人に耳鳴りがあるとされています。耳鳴りの改善には、詳しい検査で症状の原因を突き止め、適切な治療を行うことが大切です。耳鳴りや耳の違和感など、気になる症状がある時は、ぜひ当院までご相談ください。

目次

  • 原因
  • 検査
  • 治療
  • 音響療法のポイント
  • 耳鳴りについて理解すべきこと
  • まとめ

耳鳴りの原因

耳鳴りの約90%以上は難聴が原因と言われています。

難聴による耳鳴り(キーン、ミーンなどの高い音、ブーンなど低い音)

  • 突発性難聴

突発性難聴(とっぱつせいなんちょう)は、突然、片側(稀に両方)の耳の聞こえが悪くなり、耳鳴りやめまいなどを伴う原因不明の病気です。「朝起きたら聞こえなくなっていた」「○○をしていたら突然聞こえなくなった」などと突然の聞こえの低下を訴えて受診される方が多いです。突発性難聴は、幅広い年代に起こりますが、特に働き盛りの40~60歳代に多くみられます。ストレスや過労、睡眠不足、糖尿病などがあると起こりやすいことがわかっています。聴力を回復させるには、早めに治療を開始することが重要です。

  • 加齢性難聴

加齢性難聴(かれいせいなんちょう)は、加齢による変化で起こる聴力低下を指します。特に高い音域の音が両耳で聞こえにくくなり進行していくのが特徴です。高い音域の難聴なので「キーン、ミーン、セミが鳴いた音など」高音の耳鳴りを感じることが多いです。60歳代後半頃から症状が現れることが多く、80歳になると男性では8割以上、女性では7割以上の人が加齢性難聴になります。実際高齢者の耳鳴りの原因で最も多いです。加齢性難聴は加齢変化のため難聴を改善させることは困難です。そのため聞こえの不足を補う補聴器の装着が主な対処法です。聞こえだけに限らず耳鳴りの治療にも有効です。

  • 騒音性難聴

騒音性難聴(そうおんせいなんちょう)は、継続的に激しい騒音にさらされることで徐々に聴力が低下する病気です。工事現場や工場など常に騒がしい場所での仕事に従事している人に多いです。症状は進行していくため、騒がしい仕事場では耳栓をするなどの対策が必要です。

  • メニエール病

メニエール病は、めまいと耳の症状(難聴、耳のつまり、耳鳴り)を繰り返し起こす病気です。難聴は低音域が低下するため「ブーンなど」低い耳鳴りを起こすことが多いです。通常片方の耳にのみ症状は生じますが、もう片側の耳にも症状が出現し悪化することがあります。基本的な治療は薬物療法ですが、治療が難しいことも少なくありません。またメニエール病はストレスや生活習慣の乱れなどがきっかけで再発しやすいためストレスと上手に付き合ったり生活習慣を改善する必要があります。

  • 低音障害型感音難聴

低音障害型感音難聴は、急に低音が聞こえづらくなる病気です. めまいは伴いません。低音の難聴が生じるため「ブーンなど」耳鳴りも低音が多いです。突発性難聴に比較すると症状は軽くて治りやすいです。しかしこの病気は再発することがあり、再発を繰り返すうちに難聴が進行したりめまいを伴い悪化することもあります。治療は主に薬物治療です。またストレスや疲労、生活習慣の乱れがきっかけで再発したすくなるため、十分な睡眠と栄養バランスのとれた食事をとり、疲労やストレスをためないことが重要です。

耳垢による耳鳴り(ゴソゴソ、ガサガサ)

耳垢が原因で生じることがあります。頭を動かすとガサガサ音がする時には一度耳鼻科で耳垢がないかを診察してもらいましょう。また稀に寝ている間などに虫が耳の中に入ることがあります。何かが動いてると感じる時は耳鼻科に受診しましょう。

骨や筋肉のけいれんによる耳鳴り(ポコポコ、プツプツなど)

耳小骨や耳の周囲につく筋肉のけいれんで生じることがあります。基本的には経過観察で問題ありません。

脳血管走行異常や腫瘍による耳鳴り(ドクン・ドクンなど拍動性の音)

心臓の拍動に同期して聞こえる耳鳴りは要注意です。脳動脈奇形や脳動脈瘤などの脳血管の異常や腫瘍などによる可能性があります。この場合には脳神経外科に受診されることをお勧めします。

耳鳴りの検査

  • 聴力検査

耳鳴りの約90%以上は難聴によって生じるため聴力検査を行い聴力を評価します。必要に応じて鼓膜の動きを調べる検査(ティンパノメトリー)も行うことがあります。

  • 耳鳴検査

患者さんの耳鳴りに近い大きさや周波数を調べる検査です。

耳鳴りの治療法

耳鳴りの原因疾患が明確な場合はその治療を優先します。耳鳴り治療の目的は耳鳴りを消失させることではなく、耳鳴りの苦痛や生活への影響を軽くすることです。

  • 薬物療法

薬物治療で耳鳴りに効く特効薬はありませんが,主にビタミン製剤や血行改善薬、漢方などを用います。

例えば「牛車腎気丸」という漢方は高齢者の耳鳴りにオススメの治療薬です。耳鳴り改善の効果としては1994年に実施された12病院による多施設での共同研究で、150例の耳鳴り患者に対して4〜8週間牛車腎気丸を投与したところ治療結果は「改善」が39.3%,「やや改善以上」が66.7%だった報告があります。

また耳鳴りによる精神的苦痛が強く、不安やうつがある場合は抗不安薬や抗うつ薬などが用いられる場合もあります。特に耳鳴りで睡眠が障害されている場合は要注意です。

  • TRT療法

TRT療法のイメージは耳鳴りを無視して良い音と認識し、意識を耳鳴から逸らす治療法です。TRT療法の半年後の治療成績は80%以上とされています。耳鳴りに対する知識や理解を深めることで耳鳴りに対する不安感をなくす「教育的カウンセリング」や周囲に音を流し、耳鳴りを目立たなくし意識を耳鳴りから逸らす「音響療法」などがあります。

  • サウンドジェネレーター

耳に装着したサウンドジェネレーターから持続的にノイズを出して、耳鳴りに意識が向かないようにします。

メリット:サウンドジェネレーターから常にノイズを出すことができるので、時間や場所を選ばずに治療できます。

デメリット:数万円のコストが必要な点や治療が合わない場合は途中でやめてしまうリスクがあります。

  • 補聴器

補聴器は明らかな難聴がある人におすすめの治療法です。耳鳴治療の中でも最も治療有効性が高いと証明されてます。

メリット:補聴器によりすぐに聴力が補助されるため治療効果が早く出る点と難聴がある人の耳鳴り治療では治療有効性が高いとデータ上証明されている点です。

デメリット:数万円〜数十万円と高価な点と耳にかける異物感や突然音が大きくなる違和感を最初は感じやすいので途中でやめてしまう人が多い点です。特に最初の1ヶ月でリタイヤする人が多いため、最初1ヶ月を使用し続ければ補聴器に慣れて問題なく使用できることが多いです。寝る時以外は必ず補聴器を装着するようにしてください。

音響療法のポイント

周囲に音を流し、耳鳴りを目立たなくし意識を耳鳴りから逸らす方法です。耳鳴は基本的に静かな環境で目立ちます。例えば寝付く時に部屋の時計のカチカチという音が気になって眠れなかった経験はありませんか?一度気にしだすと意識しないように心がけても逆に気になって余計寝れなくなってしまいますよね?これは周りに音がないため、時計の音だけが目立ってしまっているのです。

耳鳴りもこれと同様です。ではどうすればいいか?違う音を流して耳鳴りを目立たなくせればいいのです。静かな環境だと耳鳴りだけ目立ちますが周りに音が豊富だと目立たなくなります。その具体的方法はCD,ラジオ、TV、環境音楽などを流す。環境音楽とは川のせせらぎや森のことりのさえずりなどの音です。Youtubeに「耳鳴り 環境音楽」と調べれば音源はいくらでも転がっていますので無料で使用できます。

音源を選ぶポイント

  • 長時間聞いても不快ではない音源にすることです。音が大きかったり、激しい音楽(ロックなど)歌詞があるものはよくありません。
  • 耳鳴より少し小さいくらいの音にすることです。完全に耳鳴を消失させない音量にして下さい。具体的には耳鳴りの80~90%の音を出しましょう。耳をすませば少し耳鳴りが聞こえるくらいがベストです。
  • メリット:必要な物は音源の確保だけなので簡単かつ安価にできる点と寝る間も行える点です。音源を流しておけば良いので寝る際にも可能です。逆に補聴器やサウンドジェネレーターは寝る時は外してしまうので寝付く時は治療できません。
  • デメリット:即効性は乏しい点です。効果は数ヶ月後くらいから徐々に現れてきます。しかし徐々に改善していくはずなので効果がすぐに出ないからといって焦らないようにしてください。

耳鳴りについて理解すべきこと

耳鳴りについて理解すべきことをいくつかここで解説します。

  • 耳鳴りの発生する仕組み

耳鳴の約90%以上は難聴が原因と言いましたが、難聴が起こるとなぜ耳鳴も出現するのでしょうか?実は未だにメカニズムははっきり解明されてはいませんが、その中で有力と言われている説を簡単に説明します。まず難聴によって入ってくる音の情報量が低下します。すると脳は音の情報を何とか入れようと音への感度を上げ、結果的に本来鳴ってもいない音ですら聞こえるように感じてしまうというのです。つまり脳が音に対して過敏になって、鳴ってもいない音を作り出しそれを聴いている状態に陥っているのです。

  • 耳鳴り治療のゴール

これは非常に重要なことなので肝に銘じて下さい。耳鳴り治療のゴールは「耳鳴を0にする」ことでなく、「耳鳴が気にならない程度に改善させる」ことです。ここを理解してない人が非常に多いので注意が必要です。そもそも耳鳴りは元々正常人でも起こる現象(生理的耳鳴り)です。例えば、静かな何も音のない場所で耳を澄ますと「シーン」「キーン」とか耳鳴りを感じた経験は誰もがあるはずです。しかし普段は耳鳴には特別意識が向かずに気にしていないから問題は生じていないだけです。つまり耳鳴りを完全に0にするのは困難であり、耳鳴りは気にならない程度に改善できればそれで良いのです。

  • 耳鳴りは改善することが多い

耳鳴り患者さんの中には「この耳鳴りはもう治らないのではないか」と思ってしまう方がいます。しかし実際はほとんどの人は耳鳴りは気にならない程度にまで改善していくことが多いです。不安が耳鳴りを悪化させることがあるので改善率が高いことを理解し不安を増長させないようにしましょう。

  • 耳鳴が悪化する原因

ほとんどの人が耳鳴りが改善していく中で悪化してしまう人も存在します。その原因は耳鳴の理解不足とそれによる不安などで耳鳴に意識が向きすぎているからです。言い換えると「耳鳴が不安で気になってしょうがない状態」になっています。脳が耳鳴という正体不明の音に対して警戒を続け、不安やストレスがかかってしまうのです。そのためいつまでも耳鳴が気になって悪化していきます。それを克服するためにはこれまで説明した耳鳴が起きる原因やメカニズム、今後の治り方などを理解することが重要です。なのでこの記事で説明したことをしっかり理解して下さい。そうすれば耳鳴りを意識しすぎず不安やストレスも減り耳鳴が改善しやすくなります。

まとめ

耳鳴りでお悩みの患者さんは非常に多くいらっしゃいます。多くは耳鳴りの理解や適切な治療で改善していくことが多いです。もし耳鳴りが気になるようでしたら当院に受診しご相談ください。