耳が聞こえにくい(難聴)
難聴とは?
耳が聞こえにくくなることを「難聴」といいます。徐々に聞こえにくくなる難聴や突然聞こえにくくなる難聴、まためまいや耳痛、耳のつまり感などその他の症状とともに生じる難聴など様々です。中には早期治療が必要となる疾患も隠れていることがありますので、難聴を自覚したら早期に耳鼻科に受診される事をオススメします。
目次
- 原因と治療
- 検査
難聴の原因と治療
- 耳垢が詰まる(耳垢栓塞=じこうせんそく)
意外と頻度の多い原因が耳垢です。「耳掃除をした後に聞こえなくなった」「お風呂上がりや水泳後に聞こなくなった」などと訴える方が多いです。前者は耳掃除で耳垢を奥に押しやってしまい耳が詰まります。後者は水が耳の中に入り、耳垢が水を吸収し膨張し詰まります。耳の中を観察するだけで診断がつきます。
治療・・耳垢を除去すれば改善します。その際自分で耳垢を取ろうとするとさらに耳垢を奥に押しやったりして取りにくくなるので、ご自身では何もせずに受診してください。耳垢の性状や量によっては耳垢をふやかして取りやすくする薬(耳垢水)などを使用して除去を試みることもあります
- 加齢性難聴
加齢に伴い出現する難聴です。高い音から聞こえにくくなり、どんどん進行します。本人の難聴の自覚は比較的乏しく、ご家族から「最近聞こえが悪い」「TVの音が大きい」と指摘され受診されることが多いです。もしご家族が当てはまるようなら耳鼻科に相談してみましょう。
また最近では難聴は認知症発症の最大のリスク要因だと判明してきました。補聴器など早期の対応が重要です。
治療・・加齢性難聴は加齢現象の1つなので根本的に聴力を改善させる方法はありません。そのため補聴器を使用し聞こえを補助します。また難聴は認知症発症の最大のリスクで、補聴器の早期使用で認知症発症の予防に役立つことが判明しています。当院では補聴器導入を行っていますのでぜひご相談ください。
- 突発性難聴
突発性難聴とは突発的に片側の耳の聞こえにくくなる原因不明の病気です。幅広い年代に起こりますが、特に40~60歳代の働き盛りに多く、ストレスや過労、睡眠不足、糖尿病などがあると起こりやすいことがわかっています。治療開始が遅れると治りが悪いと言われいて遅くとも1週間以内の治療開始が望ましいです。
治療・・突発性難聴は治療が遅れると聴力改善が困難となるため発症から1週間以内の治療が重要です。治療は内服や点滴の副腎皮質ステロイド薬による薬物療法が中心になります。また、血管拡張薬(プロスタグランジンE1製剤)やビタミンB12製剤、代謝促進薬(ATP製剤)などを使うこともあります。発症後1週間以内に、これらの治療法を受けることで、1/3の人は完治し、1/3の人にはなんらかの改善がみられます。ただし、治療開始が遅れれば遅れるほど治療効果が下がり、完治が難しくなってしまうので、注意が必要です。その他ステロイド鼓室内注射、高圧酸素療法など存在します。
- 低音障害型感音難聴
低音障害型感音難聴は突然低い音だけに限定して聞こえが悪くなる病気で、20~30歳代の若い女性に多い病気です。感音性難聴のきたす病気の中でも最も頻度の高い病気です。放置すると難聴が進行したり、めまいも出現しメニエール病に進行する可能性がありますので適切な治療が重要です。
治療・・一般的には突発性難聴などと比較して治りが良いとされていますが再発を繰り返したり、難聴が進行することがあるので適切な治療が必要です。治療は薬物療法と生活習慣の改善が中心です。薬物療法は浸透圧利尿剤、血液循環改善剤、漢方、ステロイド薬、などを使って治療します。また睡眠不足や精神的、肉体的ストレスが大きな誘因となるので規則正しい睡眠や適度な運動を心がけましょう。
- メニエール病
メニエール病は聴覚症状(耳鳴り、難聴、耳閉感など)を伴うめまい発作が繰り返し起こる病気です。30~50歳代の女性に多く、その他神経質・几帳面な性格の人に起こりやすいです。原因は耳の中にある「内リンパ」という部分が水分で膨らんでしまう状態(内リンパ水腫)と考えられています。通常聴覚症状は片側の耳でおきますが進行すると両側になったり、難聴が戻らなくなる場合もあるので適切な治療が必要です。
治療・・治療は薬物療法と生活習慣の改善が中心です。薬物療法としては浸透圧利尿薬を用いて内リンパ水腫の軽減を図り、内耳循環改善薬・ビタミンB12・漢方薬などを用いて症状を抑えます。めまいへの不安が強い場合には抗不安薬なども使用します。症状が強い場合には短期的にステロイド薬を使用することもあります。また睡眠不足や精神的、肉体的ストレスが大きな誘因となるので規則正しい睡眠や適度な運動を心がけましょう。睡眠時間は最低6時間以上はとるように心がけ、決まった時間に起きて生活のリズムを一定にしましょう。運動はストレス解消や血流改善効果もあります。ウォーキングやジョギングなどがお勧めです。その他中耳加圧療法、手術療法があります。
- 音響外傷
大きい音にさらされたことが原因で難聴になります。音楽ライブやヘッドホンで大音量で聴くなどの原因が多いです。軽度の場合は自然治癒することもありますが、症状が続く場合は早めに耳鼻科を受診する必要があります。
治療・・ステロイド薬や血流改善剤などの薬物療法が主に行われます。重症の場合には入院や高圧酸素療法などが必要になることもあります。
- 急性中耳炎
中耳の炎症によって難聴が生じます。多くは風邪などの感染から始まり、その感染が耳管を伝わり中耳炎を引き起こします。乳幼児(特に3歳児以下に多い)に多いですが、子供は自分で耳が痛いことを表現できないことが多いです。代わりにすごく泣いたり、不機嫌だったり、耳を気にして触ったりする場合が多いので保護者がこられサインを見逃さないことが重要です。
薬物治療・・ごく軽症の場合は抗生剤がなくとも改善することがありますが、それで改善しない場合や中等症以上の場合は主に抗生剤治療を行います。改善の経過で中耳に滲出液が溜まる滲出性中耳炎に移行することが多いですが治療を継続すればじきに改善します
鼓膜切開・・中耳炎が重症の場合や抗生剤での改善に乏しい場合は鼓膜切開を行い、膿を排出させて改善を図ることもあります
- 滲出性中耳炎
中耳に液体が溜まる中耳炎によって難聴が生じます。急性中耳炎が治る過程でも生じやすいです。こどもは自分で難聴を訴えることは少なく、耳痛も伴わないため気付きにくいです。そのため「呼んでも返事しない」「TVの音が大きい」などの症状があれば要注意ですこどもの場合両側の耳で滲出性中耳炎になることが多いため、音の情報が脳に入りづらく、結果的に言葉の発達に影響することがありますので気になる親御さんは耳鼻科にお子さんを受診させましょう。また高齢者でも滲出性中耳炎になる場合がありますその場合には喉の上方(上咽頭)にガンなどの腫瘍が隠れている場合もあるので、電子内視鏡(鼻ファイバースコープ)で観察します
薬物治療・・溜まった浸出液を排出しやすくするために去痰剤の内服を行います。また、鼻炎や副鼻腔炎などがある場合はその治療も行います。特に「鼻すすり」の習慣がある場合は、滲出性中耳炎になりやすくなるのでやめましょう
鼓膜チューブ手術・・小児では、保存的治療で改善することも少なくないですが、3か月以上の薬物治療でも改善が見られない両側性の滲出性中耳炎の場合で30dB以上の難聴がある場合などは鼓膜換気チューブ留置を検討します。成人であれば局所麻酔でも可能です。
難聴の検査
- 耳鏡検査
外耳道や鼓膜の状態を観察します。耳垢が詰っているかも観察できます。
- 聴力検査
難聴の程度を測定することができます。
- ティンパノメトリー
鼓膜の動きの正常さを見る検査です。滲出性中耳炎などで使用します。
- めまい検査
難聴にめまいが伴う場合にめまいの検査も行うことがあります。
- 電子内視鏡検査
高齢者で滲出性中耳炎と診断された場合、電子内視鏡(鼻ファイバースコープ)を用いて上咽頭腫瘍の有無を確認します。