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長引く不調の原因かも?上咽頭炎の治し方


こんにちは、名古屋はなまる耳鼻科クリニックの院長の佐藤(Dr.はなまる)です。今回は「長引く不調の原因かもしれない上咽頭炎とその治療法」についてお話しします。慢性的な頭痛、目の奥の痛み、肩こり、疲労感、さらにはうつ症状やコロナ後遺症に悩んでいる方は、実はその原因が「上咽頭炎」にあるかもしれません。


上咽頭炎とは何か?


まず「上咽頭」とはどこにある部位なのか説明します。上咽頭は、喉ちんこのすぐ上、鼻の奥にある空間のことで、左右の鼻から吸い込んだ空気が合流し、喉に向かう途中の場所にあります。この部分は、空気中の汚れやウイルス、細菌が最初に触れる場所であり、免疫機能が非常に活発に働いている領域でもあります。いわば、身体の免疫システムの「最前線の戦場」とも言える場所です。


上咽頭は、健康な人でもウイルスや細菌にさらされやすく、炎症を引き起こしやすい部位です。上咽頭炎は急性と慢性に分けられます。急性上咽頭炎は、風邪の一環として現れる一時的な炎症で、一般的には薬や時間の経過と共に治ります。しかし、慢性上咽頭炎は、ストレスや免疫力の低下、さらには寒冷やほこり、花粉、タバコの煙などの外的刺激により、炎症が治まらずに長引くことがあります。こうした慢性の炎症は、全身の不調の原因となる可能性があるのです。


上咽頭炎の症状とその影響

上咽頭炎によって引き起こされる症状は、実に多岐にわたります。代表的な症状には、後鼻漏(鼻水が喉に流れ込む)、頭痛、目の痛み、首や肩のこり、全身のだるさや疲労感、さらにはうつ症状まで含まれます。これらの症状は非常に不快で、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。

特に上咽頭が炎症を起こすと、鼻や喉に常に違和感があり、粘膜がへばりつく感じや、何かが喉に詰まっているような感覚を覚えることがよくあります。さらに、上咽頭は顔の中心部に位置しているため、脳や目に近く、炎症がこれらの部位に関連した痛みを引き起こすことがあります。頭痛や目の奥の痛みが慢性的に続く場合、それは上咽頭炎が原因である可能性があります。

また、上咽頭は自律神経とも密接に関わっています。自律神経とは、交感神経と副交感神経からなる、意思とは無関係に身体の機能を調節する神経系です。特に副交感神経の重要な部分である迷走神経が、上咽頭周辺に広く分布しています。この迷走神経は、頭から出て全身の臓器にまで広がり、臓器の働きを調整しています。したがって、上咽頭の炎症が迷走神経に影響を与え、全身の不調を引き起こすことが考えられるのです。

実際、IgA腎症や喘息、アトピー性皮膚炎などの全身性疾患に、上咽頭炎が関与していることが医学的に解明されています。さらに、新型コロナウイルス感染症では、感染後に上咽頭の炎症が続くケースが多く見られ、コロナ後遺症の一因として上咽頭炎が関与しているのではないかという報告も増えています。このように、全身の不調やコロナ後遺症にも関与する可能性がある上咽頭炎は、今まさに注目を集めている病気なのです。


上咽頭炎に対するセルフケア


では、上咽頭炎を予防したり、症状を軽減するためのセルフケア方法をいくつかご紹介します。


1. 鼻うがい

鼻うがいは、鼻や上咽頭に付着した汚れやウイルス、細菌を洗い流す効果的な方法です。市販の鼻うがい用の器具と塩水を使い、1日2~3回行うことで、上咽頭を清潔に保つことができます。

鼻うがいを行う際は、ぬるま湯に食塩を溶かし、鼻から入れて口から出す方法が一般的です。特に、風邪が流行っている時期やアレルギー症状が出ている場合は、鼻うがいをすることで上咽頭の炎症を予防できる可能性があります。


2. 鼻呼吸を心掛ける

鼻呼吸は、空気中の異物やウイルスをフィルタリングする機能があり、上咽頭を守るために重要です。しかし、口呼吸をしていると、乾燥した冷たい空気が直接上咽頭に入り、炎症を引き起こしやすくなります。日常的に鼻呼吸を心掛け、鼻が詰まっている場合は、耳鼻科で適切な治療を受けることをおすすめします。

就寝中に口呼吸になってしまう方は、就寝時に口にテープを貼って寝る方法も効果的です。市販の口テープを利用するか、絆創膏を利用してもよいでしょう。


3. 首を温める


首を冷やさないようにすることも、上咽頭炎の予防には効果的です。特に寒い季節には、マフラーやストールを使って首周りを温めるようにしましょう。首を温めることで、上咽頭周辺の血流が改善し、炎症を抑える効果が期待できます。


EAT(Bスポット)療法:上咽頭炎の治療法

上咽頭炎の治療法として注目されているのが、EAT(Bスポット)療法です。この治療法では、塩化亜鉛を含ませた綿棒を使い、上咽頭の炎症を直接抑えます。EAT療法は、耳鼻科や一部の内科で行われ、鼻や口から綿棒を挿入して上咽頭を擦ることで治療が行われます。

塩化亜鉛には消炎作用、殺菌作用、抗ウイルス作用があり、上咽頭炎を直接的に抑える効果があります。治療自体は短時間で済みますが、痛みや出血を伴うことがあります。しかし、痛みや出血があるということは、炎症が強い証拠であり、その分治療効果が期待できると考えられます。

EAT療法は週に1~2回の頻度で行い、合計で10~15回を目安に継続します。治療の目標は、症状が日常生活に支障をきたさないレベルまで改善することです。症状が改善しない場合は、15回以上の治療が必要になることもあります。


まとめ

上咽頭炎が原因となっている慢性的な不調やコロナ後遺症の治療について、少しでも理解が深まったでしょうか? 自分の体調不良が上咽頭炎によるものかもしれないと感じた方は、一度専門の医療機関で相談してみることをおすすめします。

もし、この記事がお役に立ったと思われたら、ぜひ私たちのクリニックにご相談ください。また、今後も体調に関する情報を発信していきますので、引き続きブログや動画をチェックしていただけると幸いです