予約 診療時間

嗅覚障害

嗅覚障害とは?

嗅覚障害は、「においがわからなくなった」「においの感じ方が今までと変わった」といった状態を指します。嗅覚障害になると、「ガス漏れを察知できなくなる」など日常生活で危険を伴います。また、嗅覚障害は、嗅覚障害に陥ると味覚も低下することが多く、食事が楽しめなかったり生活の質が落ちてしまいがちです。一般的に嗅覚障害は長期間放置してしまうと治りが良くないと言われているため、気づいたら早めに耳鼻科に受診しましょう。

目次

  • 症状
  • 原因
  • 検査
  • 治療
  • 嗅覚刺激療法(嗅覚トレーニング)
  • まとめ

嗅覚障害の症状

  • においの感覚が弱くなる(嗅覚低下)
  • においを全く感じなくなる(嗅覚脱失)
  • 今までとは違う匂いに感じる(異嗅症)
  • 実際には存在しない匂いを感じる(幻嗅)など

嗅覚障害の原因

最初に人間が匂いを感じるまでの流れと仕組みを説明します。まず匂い物質が吸う息の空気の流れに沿って鼻の中に入ってきます。それが鼻の天井にある匂いを感じ取る部分(嗅部)に届き、嗅細胞が臭いの刺激を受信します。その後匂いの情報は神経を伝って脳に届き匂いを感じるのです。そして嗅覚障害はこのどこかの段階で異常が生じると嗅覚障害が起こります。

その原因は大きく3つあります。

  • 気導性嗅覚障害(アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、鼻風邪、鼻中隔湾曲や鼻茸など)

簡単に言うと匂い物質が鼻の奥の嗅細胞に届かずに起こる嗅覚障害です。鼻水が増えたり粘膜が腫れたり、鼻茸が発生したり、鼻の構造的異常などがあると鼻の通りが悪くなり匂い物質が鼻の天井まで届かないため嗅覚が低下します。

  • 嗅神経性嗅覚障害(鼻風邪、新型コロナウイルス感染症)

簡単に言うと、匂いを感じる部分(嗅細胞)が障害されて起こる嗅覚障害です。風邪も新型コロナウイルス感染症もどちらも基本的にはウイルス感染ですがそのウイルスによって直接、匂いを感じ取る部分の嗅細胞がダメージを受けて匂いが感じ取りにくくなります。

  • 中枢性嗅覚障害(頭部外傷、脳疾患[脳梗塞、脳出血、パーキンソン病]加齢、認知症など)

簡単に言うと匂いを伝える神経や脳自体の障害で起こる嗅覚障害です。一般的には治りにくい部類の嗅覚障害です。ちなみに最近では嗅覚障害が認知症の初期症状であることは判明しており、認知症の早期発見のために注目されています。

嗅覚障害の検査

  • 鼻鏡検査

鼻の中を肉眼で観察します。

  • 電子内視鏡検査

電子内視鏡(鼻ファイバー)を用いて、鼻の通りや嗅細胞が存在する嗅裂という部分の観察、その他鼻茸や鼻中隔湾曲症の有無を観察します。

  • 画像検査

CT検査やMRI検査を行い副鼻腔炎の有無、脳疾患の有無などを検査します。

  • 静脈性嗅覚検査(アリナミンテスト)

アリナミンという薬を血管内に注射します。注射開始からにおいを感じるまでの時間と匂いを感じてから感じなくなるまでの時間を測定し、嗅覚障害の程度を判断します。嗅覚障害はあっても匂い自体を感じられた方については治りが比較的良いと考えられています。逆ににおいを全く感じない人は治りが悪いと言われています。

  • 基準嗅力検査(T&Tオルファクトメーター)

この検査では、5種類のにおいを使って、嗅覚の検知域値(においを初めて感じる濃度)や認知域値(どのにおいかを認識できる濃度)を測定します。この検査は嗅覚障害の程度判定や労災の補償判定にも利用されています。

嗅覚障害の治療法

  • 元疾患の治療

アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎、鼻中隔湾曲症、鼻茸など嗅覚障害の原因となる病気の治療をします。

  • 薬物療法

患部の炎症を抑えるためのステロイド剤の点鼻やビタミン剤・代謝改善薬、漢方薬の内服が基本となります。嗅覚障害は長期的な治療になることが多く、数ヶ月間〜1年間と継続する場合があります。

嗅覚刺激療法(嗅覚トレーニング)

嗅覚刺激療法は、嗅覚障害に対する治療法の1つです。この治療法は、バラ、レモン、ユーカリ、クローブの香りを1日2回、10秒間嗅ぐことで嗅覚神経細胞を刺激し、嗅覚改善を期待する治療法です。「嗅覚障害診療ガイドライン」によると感冒後嗅覚障害(風邪をひいた後に出現する嗅覚障害)の患者で約12週間嗅覚刺激療法を行ったグループは、行わなかったグループに比較し嗅覚が改善していた傾向があり、また32週間、嗅覚刺激療法を行ったところ、79%の患者さんが嗅覚の改善を認めたという報告があります。

ちなみに事故などの頭部外傷で起こる外傷性嗅覚障害でも嗅覚刺激療法を行わなかったグループの改善率が約13%だったのに対して、16週間嗅覚刺激療法を行ったグループの改善率は33%に及んだとの報告がされてます。本来外傷による嗅覚障害の治りは一般的に悪いとされているので、少しでも改善率を上げるために率先して行うべきしょう。また普段から例えにおいがしなかったとしても、鼻呼吸を意識し匂いを感じる努力をすることはとても大事なので意識しましょう。

  • 嗅覚刺激療法 アロマバージョン

まずは一般的に勧められている方法はアロマを用いる方法です。バラ・レモン・ユーカリ・クローブのアロマを用意します。たまにラベンダーなど違う香りが入っていることがありますが特に問題はありません。これらは通販サイトなどにも市販されているので簡単に用意できます。

具体的な方法を解説します。

  1. 香りを意識しながら10秒ほど嗅ぎます
  2. 嗅ぎ終わったら蓋を閉めて1分間リラックスし、次の匂いを嗅いでいきます
  3. すべての匂いを嗅ぐのを1セットとし1日2セット(朝晩)を3ヶ月以上継続します
  • ポイント①「匂いを意識して嗅ぐ」

嗅いでいる時は、何のアロマを嗅いでいるのかを意識しましょう。例えばラベンダーを嗅ぐなら、これまで嗅いだラベンダーのあるべき匂いを頭で思い浮かべながら嗅ぐということです。

  • ポイント②「1分間休んでから次を嗅ぐこと」

1つ匂いを嗅いだら1分間休んでください。時間がもったいないと感じてしまうかもしれませんが匂いはしばらく鼻に残るので、立て続けに嗅いでも匂いが分かりにくくなってしまいます。1分ほど時間をおいて嗅ぐようにしましょう。

  • 嗅覚刺激療法 日常生活バージョン

アロマが用意できないため、もっと身近なものでトレーニングしたいという方や毎日やるなんて忘れそうと心配になる方もいますよね?そんな方にもできる嗅覚刺激療法があります。それが身近なものを匂いを嗅ぐ方法です。

嗅ぐものはコーヒー、カレー、石鹸、花などなんでもいいです。例えば朝コーヒーを飲むという人はコーヒーを飲む時にその匂いを10秒ほど嗅ぐ練習をします。その時コーヒーの匂いを意識しながら嗅ぎます。他にもご飯でカレーが出てきたなら、匂いを10秒間嗅ぎます。お風呂で石鹸を使用してるなら石鹸の匂いを10秒嗅ぎます。このように身の回りにある匂いを発する物を見つけては、その都度匂いを嗅ぐ練習をするだけです。これならわざわざトレーニングの時間を確保することもないし、忘れず簡単にできます。

大事なのは3ヶ月以上毎日継続して行うことなので続けられそうな方を選んで行ってもらえればいいかと思います。

まとめ

嗅覚障害は、放置すると、食事の楽しみが減ったり、季節の香りを感じにくくなったりと、生活の質を下げることにつながる可能性があります。早期の治療や専門医との相談が重要ですので気になる方は耳鼻咽喉科へ受診してください。