持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)
持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)とは?
持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)は、2017年に提唱された新しい概念のめまいです。最初に急なめまいを発症した後に原因のめまいは改善したにも関わらず、ふわふわしためまいや不安定感が3ヵ月以上にわたってほぼ毎日みられる病気です。40歳台に最も多く見られます。一般的に3か月以上症状が持続するめまいを慢性めまいといいますが、その原因として持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)が最も多く、約40%を占めると言われています。そのため今まで原因不明と言われてきためまいの中に実はPPPD (持続性知覚性姿勢誘発めまい)が多く含まれていたのではないかと考えられています。
目次
- 症状
- 原因
- 検査
- 治療
持続性知覚性姿勢誘発めまいの症状
- 3カ月以上続くめまい
主な症状は、3カ月以上続く浮動感、不安定感、非回転性めまいです。めまいの特徴としては縦や横に揺れる感じや、安定を保てない感じです。よくある目が回るようなめまいではありません。また支えがなく立っていたり座っていて、頭が後ろに持ってかれたり、横に倒れそうになる感じがする人もいます。継続時間としてはずーっとふわふわしている浮動感で、一瞬ふわっと感じるようなめまいは別の病気を考えます。
これらのめまい症状が次のことがきっかけで起こったり、悪くなったりします。
- 立ったり歩いたりする
- 体を動かしたり、動かされたりすること(エレベーター、エスカレーター、電車、バスへの乗車など)
- 複雑な模様(色合いや凹凸)や激しい動きのある映像を見ること(パソコンやスマートフォンのスクロール画面を見る。テレビや映画などで激しい動きのある画像を見る。本や新聞などの細かい文字を見る。スーパーやホームセンターなどの陳列棚を見る)
この中では③が持続性知覚性姿勢誘発めまいに特徴的な症状と言えます。なぜなら①や②の姿勢や動作などで悪化するめまいは加齢によるめまい(バランス機能低下や筋力低下によるふらつき)でもかなり起きますが③の視覚的な刺激によってめまいが悪化するのは加齢よるめまいではあまり起きないからです。
持続性知覚性姿勢誘発めまいの原因
持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)のはっきりとした原因は不明ですが、一説では最初に起こっためまいを克服するために、体がよかれと思って行った補正の反応が過剰状態になって起こっていると考えられています。
持続性知覚性姿勢誘発めまいの検査
一般的に持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)の診断は症状や病歴が重要であり、診断に直結する検査はありません。しかしその他のめまい症との鑑別のために以下の検査を行うことがあります。
- 耳鏡検査
外耳道や鼓膜の状態を観察します。
- 眼振検査
めまい症状があるとき、目が無自覚に揺れる(眼振)症状が出現することがあります。この眼振を評価するために、フレンツェル眼鏡という特殊な検査用眼鏡を使用します。
- 重心動揺検査
開眼・閉眼時の体のバランスを評価する検査です。
- 聴力検査
難聴を評価する検査です。持続性知覚性姿勢誘発めまいでは難聴を伴いませんが、他の病気の否定のために検査することがあります。
- MRI検査
慢性的なめまいの場合に脳疾患を否定する場合に検査することがあります。
持続性知覚性姿勢誘発めまいの治療
急性期のめまいで使用する薬(抗めまい薬や血流改善剤、ビタミン剤など)はあまり効果がなく、また最近定義された疾患であり、治療方法が確立していません。現在、抗うつ薬による薬物治療、前庭リハビリテーション、行動認知療法などが有効との報告があります。
- 薬物療法
SSRIやSNRIといった抗うつ薬の内服治療を行います。しかし副作用や薬をやめる際に問題が生じること(離脱症状)があるため必要に応じて精神科や心療内科の受診をお勧めすることがあります。
- 前庭リハビリテーション
前庭リハビリテーションは、めまいやバランスが取れないといった問題を改善するための特別なエクササイズのことを指します。具体的には、目を動かしたり、立ったり座ったり、歩いたりするエクササイズなどがあります。これらのエクササイズは、体がどの方向に動いているかを感じる能力を改善し、バランスを取る能力を鍛えることを目指しています。
- 認知行動療法
認知行動療法は、認知(ものの受け取り方や考え方)に働きかけて心を楽にする精神療法(心理療法)の一種です。ストレスを感じると私たちは悲観的に考え、問題を解決できない心の状態になっていきますが、認知行動療法では、そうした考え方のバランスを取ってストレスに上手に対応できる心の状態をつくっていきます。例えばめまいやふらつきなどが生じるきっかけや症状の程度などをめまい日誌に記入などして自分のめまいを「認知」し、めまいやふらつきへの前向きな対応方法に気づき「行動」してめまいを改善させていくなどが挙げられます。専門的な治療を希望される場合は、精神科や心療内科に紹介します。