前庭神経炎
前庭神経炎とは?
前庭神経炎は、突然、強い回転性めまいと吐き気・嘔吐を生じる病気です。この病気は、体の平衡感覚の維持に関わる“前庭神経”という脳神経の一つに炎症が生じることで発生します。発症前に風邪症状がある人が多いため、ウイルス感染が原因と疑われていますが、詳しいことは分かっていません。めまいは数日間続くことが多く、治っても数ヶ月間ふらつきが残る場合もあります。
目次
- 症状
- 原因
- 検査
- 治療
- 予防法
前庭神経炎の症状
- 強いめまい
前庭神経炎の特徴的な症状は、強い回転性めまいで、数日間続くことが多いです。めまい発作は最初の1回だけで反復することはありません。まためまい発作が落ち着いてもその後数ヶ月間ふらつきが残ることもあります。
- 聴覚症状はない
メニエール病や突発性難聴と違い聴覚症状(聞こえづらさ・耳鳴り・耳閉感など)は伴わないのもポイントです。
- 神経症状はない
前庭神経炎のめまい症状は非常に強いですが、めまい以外の神経症状(しゃべりにくさ、手足のしびれや力が入りにくい、物が二重に見えるなど)はありません。これらの神経症状がある場合には脳疾患を疑うので早急に救急医療機関を受診しましょう。
前庭神経炎の原因
原因はまだはっきりわかっておりません。ウイルス感染が有力とも言われていますが具体的な発症のメカニズムは不明です。
前庭神経炎の検査
- 耳鏡検査
外耳道や鼓膜の状態を観察します。
- 眼振検査
前庭神経炎では持続する目の無自覚的な揺れ(眼振)が出現するのでフレンツェル眼鏡という特殊な検査用眼鏡を使用し評価します。
- 重心動揺検査
開眼・閉眼時の体のバランスを評価する検査です。
- 聴力検査
他のめまいの病気(メニエール病や突発性難聴など)との鑑別のため行います。メニエール病や突発性難聴など難聴を伴う病気と違い、前庭神経炎は特に難聴は起こりません。
- 温度刺激検査
温度刺激検査とは、外耳道に温水や冷水を注入し、生じる眼振を観察することで前庭神経炎の診断します。
- 頭部CT・MRI検査
前庭神経炎はめまい症状が強く、数日間継続するため、脳疾患(脳卒中や脳腫瘍など)との区別が難しい時あります。そのため頭部CT検査や頭部MRI検査などにより脳疾患を除外するために行われることがあります。
前庭神経炎の治療
- 薬物治療
激しいめまいがあるときは安静を維持しながら薬物療法を用いていきます。激しいめまいを抑える「抗めまい薬」や、神経への血流をよくする「循環改善薬」めまいへの不安感を和らげる「抗不安薬」なども治療に使われます。また、ふらつきなどの症状が残りにくくなるとの報告があるため、ステロイドを使用するケースもあります。一方で、前庭神経炎の原因の1つとして考えられているウイルス感染に対する抗ウイルス薬は効果がないことが分かっています。
- 前庭リハビリテーション
めまいの強い時期(急性期)が落ち着いた後に数ヶ月間ふらつきが継続することがあります。その場合前庭リハビリテーション(平衡訓練)でふらつきの改善に努めます。
前庭神経炎の予防法
まず前庭神経炎の発症のメカニズムが不明なので明らかな予防法は確立されていません。ただ前庭神経炎の再発はほとんどありませんのでめまい発作が再度起こった時には別の病気である可能性の方が高いです。