声がかれる
声がかれる(嗄声)とは?
嗄声(させい)とは、声がかれた状態のことを指します。声を出すためには、声帯という組織が振動する必要がありますが声帯がなんらかの原因で上手く振動できなくなると嗄声となります。声の出し過ぎやタバコの吸い過ぎ、お酒の飲み過ぎなどの日常生活や風邪を原因として発症することが多いですが、声帯ポリープの様な声帯の構造異常の病気、声帯の動きが悪くなる声帯麻痺、喉頭がんなどの病気により発症することもあります。
風邪や声の出し過ぎなどによる嗄声は1〜2週間程度で自然に改善することが期待できますが、声帯ポリープなどの声帯の構造異常が原因の場合は、手術などの治療も検討されます。また嗄声は喉頭がんの初期症状の可能性がありますので高齢者で嗄声が1ヶ月以上と長期間改善しない場合には耳鼻科でしっかりと確認した方が良いです。
目次
- 原因
- 検査
- 治療
声がかれる(嗄声)の原因
- 声の出し過ぎ
声の出し過ぎは、嗄声の一般的な原因の一つです。声を出し過ぎると、声帯に過度なストレスがかかり、炎症や腫れを引き起こし声帯が上手く振動できなくなり、嗄声に繋がります。具体的には、長時間にわたって大声で話したり、歌ったり、叫んだりすると嗄声になりやすくなります。教師、保育士、歌手、スポーツのコーチなど、職業柄声をよく使う人々によく見られます。これが慢性的な状態となると「声帯結節」という病気につながります
- タバコ
タバコの煙に含まれるタールは声帯に炎症を引き起こします。これにより嗄声が発生することがあります。さらに、1日に吸うタバコの本数と喫煙年数を掛け合わせた数が600を超えると、喉頭がんになるリスクが高いです。このため、過度な喫煙者の嗄声は特に要注意です。また喫煙は後述する「ポリープ様声帯」の主な原因となります
- 飲酒
アルコールにより感覚が鈍くなり、声帯に過剰な負荷がかかっていることに気づかず、傷めてしまう可能性があります。また、アルコールは利尿作用があり、脱水症状を引き起こすことがあります。これにより、声帯も乾燥し、嗄声を引き起こす可能性があります。また過度な飲酒は喫煙同様に喉頭ガンのリスクを高めるので注意が必要です。
- 風邪
風邪を引くと、喉や声帯に炎症が起こり、嗄声が生じることがあります。具体的には、風邪を引いたときに発生する咳や鼻水の症状と同じで、ウイルスの感染により声帯の粘膜が炎症を起こすことで嗄声が生じます。また、クループ症候群と呼ばれる喉頭に炎症が起こる病気も嗄声の原因になります。
- 声帯結節
声帯結節は、長期的な無理な発声や声帯の酷使が原因で、声帯の中で最も擦れ合う所にタコ(結節)のようなものができて声帯が上手く振動しなくなる病気です。声帯の擦れ合う回数の多い女性や、学童期の男子に多く見られます。教師、保育士、歌手、スポーツのコーチなど、職業柄声をよく使う人々にもよく見られます。
- 声帯ポリープ
声帯ポリープは、声帯の酷使(大きな声を出す、長時間歌い続ける、毎日長時間話す)によって、声帯の細い血管が一部破裂して声帯に血腫ができ、結果的にポリープが形成されることが原因と言われています。声帯ポリープのせいで声帯が上手く振動できなくなり嗄声となります。
- ポリープ様声帯
ポリープ様声帯は長年にわたる喫煙習慣が原因で、声帯全体がむくみ腫れあがる病気です。この状態では、声帯は上手く振動できず嗄声となります。
- 声帯麻痺
声帯麻痺は、声帯の動きを支配している反回神経が何らかの原因で機能しなくなり声帯が正常に動かなくなり嗄声が生じる病気です。声帯麻痺の原因は多岐にわたり、がん(甲状腺癌、食道癌、肺癌)や胸部大動脈瘤などが反回神経を圧迫・浸潤したり、全身麻酔時の挿管の管が原因で声帯の麻痺や脱臼を生じさせたり、ウイルス感染などで反回神経に影響がでる可能性などが考えられます。また、一通りの検査を行っても原因がはっきりしないこともあります。(特発性声帯麻痺)
- 喉頭がん
喉頭にがんが発生すると、嗄声が現れることがあります。しかし、喉頭がんの初期段階では、症状が出ないことが多いです。例外的に、「声門がん」では、早期から嗄声が出現するため、がんがまだ小さい段階で発見されることがあります。喉頭がんが大きくなると、嗄声は悪化し、息苦しさが出たり、がんから出血することにより、痰に血液が混じることもあります。これらの症状は、がんの存在に気づくきっかけになります。1ヶ月以上嗄声が持続したり、悪化したりする場合、息苦しさが出てきたり、痰に血が混じる場合は、がんの可能性もあります。そのため、耳鼻咽喉科にすぐに受診することをお勧めします
声がかれる(嗄声)の検査
- 電子内視鏡検査
喉の奥の状態を確認することが可能で、声帯の構造や動きの異常の有無や色調、左右の対称性、腫瘍(がん)の有無などを確認できます。
- ストロボスコピー検査
声帯の振動の仕方を詳しく観察するための検査です。発声中の声帯振動をスローモーション像ないしは静止像として観察することで声帯の病気を診断することができます。
- 画像検査
反回神経の障害を確認するためや、喉頭がんなどの疾患を確認するために(CTやMRI)行われることがあります。
声がかれる(嗄声)の治療
声の出し過ぎ、タバコ、飲酒
- 声帯の安静
まずは声帯を休めることが重要です。大声で話すこと、長時間話すこと、高い声や低い声を出すことなど、声帯に負担をかける行為は避けましょう。
- 禁煙・禁酒
喫煙や飲酒は喉に刺激を与え、嗄声を悪化させる可能性があります。これらを控えることで、嗄声の改善が期待できます。
- 水分補給
十分な水分を摂ることで、喉を潤し、声帯を保湿することで声帯の負担を軽減が期待できます。
- 薬物療法
症状が重い場合や、自己管理で改善しない場合は、医師の指導のもとで薬物療法(例えば、吸入ステロイド薬など)を行うこともあります
声帯結節
- 保存療法
声帯結節は声の酷使が原因であることが多いため、まずは声帯を休めることが基本です。具体的には、大声を出さない、長時間話さない、声帯に負担をかける行為を避けることが求められます。また、正しい発声方法(腹式発声)を学ぶための音声療法も行われることがあります。
- 手術療法
声帯結節の治療の基本は保存療法ですが、その保存療法で改善しない場合や、すぐに治したい場合は、結節を切除する手術が行われます。
声帯ポリープ
- 保存療法
まずは声を出さずに安静にしていることが大切です。治療が必要であれば、消炎鎮痛剤を使ったり、吸入のステロイドを使ったりします。通常であれば、こうした薬によって炎症は数カ月程度で引きます。
- 手術療法
保存療法で改善しない場合や、すぐに治したい場合は、全身麻酔で手術が行われます。手術は喉を切開する必要はなく、直達鏡(ちょくたつきょう)という器具を使い、口からポリープを切除して摘出します。
ポリープ様声帯
- 保存療法
治療はまず禁煙は重要です。軽度であれば禁煙を行うのみで治ってしまうこともあります。また浮腫の改善を期待して、消炎薬投与やステロイドホルモン剤の吸入治療も行うこともあります。
- 手術
保存的治療方法で効果が不十分な場合、手術を検討します。
声帯麻痺
- 音声療法
具体的には正しい発声方法を学び、声帯の負担を軽減する発声訓練と話しながらの呼吸を改善し、声の品質を向上させる呼吸の訓練を行います。
- 手術療法
発症から半年以上経過している場合、声帯麻痺が自然に回復する見込みはかなり低くなりますので手術(甲状軟骨形成術Ⅰ型、披裂軟骨内転術など)を検討することがあります。
喉頭がん
- 放射線治療
早期がんの場合、声帯を温存するために基本的には放射線治療が選択されます。放射線治療では、放射線をあててがん細胞を破壊し、がんを消滅させたり小さくしたりします。
- 手術療法
がんの進行度や大きさ、位置などによっては、放射線治療や化学療法では対応できない場合があります。その場合、手術でがんを切除する治療が必要となります。
- 薬物療法
薬物療法(抗がん剤)は単独では使用せず、手術や放射線治療と併用されることが多いです。