首が腫れる
首が腫れるとは?
首が腫れる原因は様々ですが、それは喉や甲状腺の異常、または首に多く存在するリンパ節の腫れによるものかもしれません。リンパ節の腫れは、感染症やがんなどの病気の兆候である可能性があります。そのため、首が腫れた場合は、早期治療のためにまず耳鼻咽喉科を受診することが推奨されます。
目次
- 原因
- 検査
- 治療
首が腫れる原因
- リンパ節炎
リンパ節が炎症を起こして腫れる病気で、主に細菌やウイルスの感染が原因となります。急性リンパ節炎は抗菌薬や消炎鎮痛薬で治療を行い、1~2週間で快方に向かいます。一方、数週間から数か月かけて腫れていて痛みがないもの、腫脹の大きさが3cmを超えているものでは悪性リンパ腫も疑われ、生検などの精密検査が行われます。
- がん
咽頭がん、喉頭がん、口腔がん、甲状腺がん、食道がんなどの進行がんの場合、首のリンパ節に転移が起こり、首が腫れたり、しこりが触れることがあります。
- 正中頚嚢胞
正中頚嚢胞は首の中央部分、喉仏のすぐ上の部分に、小さな袋状のもの(嚢胞)ができた状態です。これは、私たちがまだお腹の中にいるときに、甲状腺(のどの奥にある蝶の形をした器官)が形成される過程で、本来なら消えるべき一部が残ってしまうことが原因です。正中頚嚢胞は、首の中央部分にできる先天性腫瘍の約70%を占めています。
- 側頸嚢胞
側頸嚢胞は首の横の部分に生じます。私たちがまだお腹の中にいるときに通常は消失するはずの鰓裂という構造物がなくならずに残存し、嚢胞となった状態です。これらは生まれつきあるもので、20~40歳代に気がつくことが多いです。
- がま腫
がま腫は、舌下腺から分泌される唾液が周囲にたまり、腫瘍のように腫れる疾患です。舌下腺が何らかの理由で損傷、破綻すると、舌下腺から唾液が漏れ出るようになります。漏れ出た唾液が組織の中にたまることで「がま腫」になります。症状としては、舌の下や、顎の下が腫れます。痛みなどの症状は伴わないことが多く、小さい病変の場合は気づかれずに経過することも少なくありません。
- 甲状腺腫瘍
のどぼとけ(甲状軟骨)のすぐ下にある甲状腺の腫瘍です。甲状腺腫瘍は悪性と良性があります。
- バセドー病
バセドー病は、甲状腺ホルモンを過剰に産生する病気で、甲状腺機能亢進症の代表的な病気です。症状としては、動悸、体重減少、指の震え、暑がり、汗かきなどがあります。また、甲状腺は全体的に大きく腫れてきます。
- 橋本病
橋本病(慢性甲状腺炎)は、甲状腺ホルモンが少なくなる病気(甲状腺機能低下症)の代表的な疾患です。この病気は、免疫の異常によって甲状腺に慢性的に炎症が生じていることから、慢性甲状腺炎とも呼ばれます。この慢性炎症によって甲状腺組織が少しずつ壊され、甲状腺ホルモンが作られにくくなると、甲状腺機能低下症が生じます。症状としては、全身の倦怠感、寒がり、体重増加、便秘、かすれ声などが生じることがあります。また、甲状腺が腫れてきて、くびの圧迫感や違和感が生じることがあります。
首が腫れた時の検査
- 視診・触診
首の腫れた部分の位置、大きさ、硬さ、動き、表面の状態などを確認します。
- 電子内視鏡検査
鼻から細い喉頭ファイバーを入れて、鼻からのどにかけて観察できます。腫瘍の有無や炎症の有無などを観察可能です。
- 超音波検査
首の腫れた部分の内部構造や血流などを詳しく調べます。
- 生検検査
腫れた部分から細胞や組織を採取し、顕微鏡で詳しく調べます。
- 血液検査
感染症や甲状腺機能異常(バセドー病・橋本病など)などの可能性を調べます。
- 画像検査
CT検査やMRI検査などを行い、首の腫れた部分の位置や大きさ、他の部位との関係などを詳しく調べます。
首が腫れた時の治療
- リンパ節炎
急性リンパ節炎はリンパ節腫脹の原因として頻度が高く、腫れた部位の痛みを伴いますが、通常は抗菌薬や消炎鎮痛薬の投与により1~2週間で良くなります。
- がん
それぞれがんの原因や進行度によって手術・放射線・化学療法などが選択されます。
- 正中頚嚢胞・側頸嚢胞・がま腫
基本的に嚢胞が自然に消失することは期待できず、放置すると感染症などを生じることもあるため、手術により摘出することが治療の基本です。
近年、がま腫に対する治療として、OK-432(ピシバニール®)という薬剤を直接腫瘍に注入する方法が用いられるようになっています。この治療は腫瘍を縮小させる効果があり、手術に比べて患者の負担が少ないとされています。ピシバニール®は、溶連菌(一種の細菌)をペニシリンという抗生物質で処理し、その後乾燥させたものを有効成分としています。
- 甲状腺腫瘍
良性腫瘍、悪性腫瘍どちらの場合も治療の基本は手術による摘出ですが、良性の甲状腺腫瘍の場合、腫瘍が小さく、痛みなどの症状が無ければ経過観察とすることもあります。
- バセドー病
抗甲状腺薬を用いて甲状腺ホルモンの分泌を抑えます。ただし効果や副作用には個人差があります。また手術治療を行うこともあります。重症で薬でなかなかコントロールできないケースや妊娠中、早く治したい時に適しています。
- 橋本病
橋本病の治療は、甲状腺機能が正常であれば原則的に治療は必要ありません。甲状腺機能低下症がある場合は、合成T4製剤の内服を行い、甲状腺ホルモンを補充します。